健康保険の保険料は、被保険者の収入に応じて決められます。しかし、収入には月給や日給、時給、歩合給などがあり、また残業などにより月ごとに変動があるため、そのままの額を基礎とするのは事務的に煩雑となってしまいます。そこで収入を区切りのよい幅で区分した「標準報酬」を設定しています。
すべての被保険者の収入をこの区分に当てはめて固定することで、計算をしやすくしているのです。
標準報酬月額は最低(58,000円)から、最高(139万円)まで50の等級に分かれており、原則として1年間固定します。
保険料の計算だけでなく、傷病手当金、出産手当金などの支給額の計算にも、この標準報酬が使われます。
標準報酬は、資格取得時決定、定時決定、随時改定、育児休業等終了時改定の5通りの方法で決定されます。
入社したときの初任給をもとに標準報酬が決定されます。その後は、年1回の定時決定または随時改定によって見直しが行われます。
標準報酬は、毎年7月1日現在の全被保険者を対象に年1回見直しが行われます。4月、5月、6月の3か月の給料等の平均をもとに、その年の9月分保険料(10月給与から控除)より1年間の標準報酬が決定されます。
昇給やベースアップなどで固定給が変わったり、給料等の体系が変更されたりしたときで、その後の3か月間の給料等が大幅に変動したときは、そのつど標準報酬月額が改定されます。
被保険者が産前産後休業を終了後に、育児等を理由に報酬が低下した場合、定時決定まで保険料負担が改定前のものとならないよう、産前産後休業終了後の3か月間の標準報酬月額を元に改定します。
被保険者が育児・介護休業法による育児休業期間(育児休業に準ずる制度による休業期間も含む)を終了した後、3歳未満の子を養育する場合に限り、育児等を理由に報酬が低下した場合、被保険者が事業主を経由して健康保険組合等に申し出をした場合は、標準報酬月額を改定することができます。
保険料は、標準報酬月額に保険料率を乗じた額で、月ごとに納めます。
また、賞与についても標準報酬月額と同じ保険料率をかけた保険料を納めます。このように年収ベースで保険料を納める制度を総報酬制といいます。賞与等が支給されたときには、支給額の1,000円未満が切り捨てられ、標準賞与額として月額給与と同じ保険料率を乗じて保険料を算出します。
ただし、標準賞与額には上限が決められており、その額は573万円となっています。
保険料率は1000分の30から1000分の130の範囲内で、各健康保険組合の実情により自主的に決定することになっています。
また、保険料は事業主と被保険者が原則折半で負担することになっていますが、負担割合についても健康保険組合が決定することができます。
当健康保険組合の健康保険料率=1,000分の100 (事業主1,000分の50、被保険者1,000分の50) (令和6年4月現在) |
高額な医療費が発生したときに費用を共同負担したり、財政が苦しい健康保険組合に助成金を出したりなど、健康保険組合間の相互扶助事業があります。
健康保険組合では、この事業の財源にあてるため、保険料の一部を調整保険料として徴収しています。
産前産後休業を取得した被保険者は、保険料が免除されます。保険料が免除される期間は、産前産後休業期間中(産前42日(多胎妊娠の場合は98日)、産後56日のうち、妊娠または出産を理由として労務に従事しなかった期間)です。
育児休業中の被保険者は、健康保険料の免除の申出をすることにより、被保険者負担分および事業主負担分の保険料がともに免除となります。免除期間は、「健康保険育児休業取得者申出書」を提出した月から、育児休業が終了する日の翌日が属する月の前月までとなっています。
令和4年10月から短期間の育児休業等を取得した場合への対応として、育児休業等の開始月については、同月の末日が育児休業等期間中である場合に加え、同月中に14日以上の育児休業等を取得した場合にも、保険料が免除されます。
賞与保険料は、賞与月の末日を含んだ連続した1カ月を超える育児休業を取得した場合に限り免除となります。
40歳以上65歳未満の被保険者は介護保険にも加入することになり、第2号被保険者として、健康保険料のほかに介護保険料も負担します。
介護保険料の計算方法は、標準報酬月額および標準賞与額に介護保険料率を乗じた額で、保険料の半額は事業主が負担をします。
また、被扶養者については、被保険者が加入している医療保険制度全体で負担するので個別に負担する必要はありません。
当健康保険組合の介護保険料率=1,000分の15 (事業主1,000分の7.5、被保険者1,000分の7.5) (令和6年4月現在) |
標準報酬の「報酬」には、どんなものが含まれますか? | |
保険料が差し引かれるのはいつの給料分ですか? |